ありがちな話

 
それはまだ幼稚園にすら入っているかいないかという頃。
 
母に手をつながれ歩いていると、百円玉が道端に落ちていることに気づいた。
 
それを拾い上げると母は自分に「拾ったものは交番にとどけないといけない」と言った。
 
帰り道、自分は母と二人で交番に寄り
そこにいた駐在さんにこれを拾ったと告げ、百円玉を手渡した。
 
駐在さんは
 
「届けてくれてありがとう。これは探している人に渡しておくね。
 じゃあこれはそのお礼だよ」
 
と、自分の財布から百円玉を取り出し、自分に手渡してくれた。
 
 
駐在さんの顔は覚えていない。
台詞だって本当にこんな言葉だったかは曖昧だ。
 
でもこの素敵な出来事は、今も心の中に。